<たかのこういち(著)>
<松本隆治(絵)>
「バツイチだって、子どももいるんだって」。
「シー!!よけいなこと言わないの」。
ホテルの最上階のレストラン。結婚式が行われている。来賓の挨拶も終わり、食事が始まった。
「落ち着くところに落ち着いたのよ。さと美は幸せになるよ」。
新婦の近くのテーブルのアラサーの二人の女性は、新郎新婦の中学からの同級生。シャンパンで乾杯し、スープに手をつけたところ。
「美味しい」。
「うん、美味しい」。
「ほら、矢代君、デレデレよ」。新郎新婦は、同じ中学の同級生同士の結婚。
「彼、運動部だったね」。
「サッカー」。
「イタリアにサッカー修行に行って、料理を覚えて帰ってきたそうよ」。
「それでイタリア料理店のシェフか」。
「彼の家、質屋じゃない。さと美も質屋の嫁には抵抗あったみたい。だけどイタリア料理店ならね」。
「たしかに」。
「このスープ、彼の料理だって」。
「美味しいわ」。友人がお決まりのてんとう虫のサンバを歌っている。振り付けに笑いがあふれる。
「あら、あの子」。ふと見ると、幼稚園くらいの女の子がとことこ走ってきて、新婦の膝にちょこんと座った。
「さと美、えらいね」。
「えらいね」。
「幸せになるね」。
「幸せになるね」。
新婦の白い歯が印象的だ。
「ホワイトニングは、一年中ですか?」。宮川院長に聞く。
「そうですね。進学就職のこの季節は多いです。虫歯治療も多いですよ」。
宮川院長の願いは、海老名の歯を美しくすること。