<たかのこういち(著)>
<松本隆治(絵)>
オトナよ、すてきなオトナ。丸い流行のメガネをかけた女性が、ゆったりと微笑む。
「わたしも感動した。でも、あなたは直接見たんでしょ」。グレーのニット帽を頭にのせた女性が、羨ましげに言う。
「母が寒がりだから、結局見たのはスケートだけ。スキーもみたかったけど」。
「韓国って寒いのね」。
二人は、ママ友。子どもが同じ幼稚園に通う。メガネの女性はサンドイッチを食べ、ニット帽の女性はランチをたべている。コーヒーと紅茶が、それぞれの前に置かれている。メガネの女性は、母と一緒に韓国に行った。スピードスケート500メートルの話をしている。
「オトナよ、レースの後、彼女、韓国選手の肩を抱いたでしょ。涙が出たわ」。美しいシーンだった。
「すてきね。世界に誇れる日本人て感じ」。笑ったときの歯の白さが印象的だった、とメガネの女性。
「耀く白さ。メダリストは、歯が命」。聞いたことがあるようなセリフね、とニット帽が笑う。
「先生、たしかにメダリストは歯が命でしょうね」と、宮川院長に訪ねる。
「その通りです。歯は、知らないうちに傷んでいます。歯周病とか。最近、歯茎下り症が話題ですね。知らないうちに歯茎が下がってくるんです。これは、要注意ですね」。院長が、一瞬顔をくもらせる。
宮川院長の願いは、海老名の歯を元気にすることだ。