『噛んでイスタンブール。』 〜オモシロ歯ばなし

<たかのこういち(著)>
<松本隆治(絵)>

はのイラスト_太

「夢みたいだったわ」。「オリエント急行ね」。

3人のママが話している。

オリンピックの競技場になっている公園の入り口にあるカフェは、大きなガラス窓で寒風を遮り、午後の穏やかな陽ざしだけが入り込んでいる。

子どもたちは近くの託児所で遊んでいる。

「娘も喜んでくれたわ。初めての海外旅行だったから」。

「うらやましいわ」。

「ツアーだから、楽だった」。ところ

がねえ、と旅行ママが顔を曇らせる。イスタンブールのホテルのレストラン、三日目のこと。

「ママ、フランス人て、歯が丈夫なのね」。娘が言う。

「あら、なんで?」。

「だって、こんなに固いフランスパンを平気で食べてるんでしょ?」。

アラッと思ったわ。実はわたしも、ずいぶん固いフランスパンだと思っていたの。

「あらあ、そうなの、そんなに固いの?」。

「たまたまかもしれないけれどね」。そこで、娘が言った。

「ママ、外へハンバーガー食べに行かない? イスタンブールにマックあるかしら?」。

「あらあら」と二人のママ。

・・・そうですねえ。宮川院長が言う。「フランス人が歯が丈夫ということはわかりませんが、たしかに固いものは、歯にも顎にもダメージを与えます。顎がはずれやすくなることもありますので、要注意です。噛むということは、バランスが大事です。そのためにも歯の定期検診が必要ですね。最近は定期的にいらっしゃる方が増えています」。

海老名の歯をゲンキにしたい。宮川院長は、そう言ってゆっくり笑います。