『歯と才能』
〜オモシロ歯ばなし

頭脳は、正直にできている。

脳学者の茂木健一郎先生、生命学者の養老孟司先生がいうまでもなく、脳の主要な記憶装置は、「海馬」です。

この「海馬」の働きを左右する「扁桃体」が「海馬」の入り口にあって、心地よいもの、興味のあるもの、おもしろいものを、「はい、どうぞ」とばかりに記憶装置に送り込みますが、逆に、不快なもの、興味のないもの、つまらないものは、「こんなもの記憶する価値がない」と判断し、拒絶します。いうなれば、「扁桃体は、記憶の関所」です。だれの脳にも、自然にそうした働きがあります。

子どもたちは、たのしい授業、おもしろい授業は、成績がよく、つまらない授業の成績は悪い。それは、「扁桃体」の働きです。これは、どなたにも経験があるでしょう。私も、好きな国語の成績はいいのですが、嫌いな算数の成績はよくありませんでした。

さて、かんじんなお話はこれからです。「美味しいものを美味しく食べる幸せ」についてお話ししましょう。

アスリートたちが「歯」を大事にする理由は、はっきりしています。サッカー、野球、テニス、陸上競技など、人気のアスリートたちは、みんながみんな、「食」を大切にしています。大事なエネルギー源、体格づくりの栄養源です。「美味しいものを美味しいと感じて食べる」ことが、エネルギーや栄養をしっかり吸収することを知っているのです。彼らには、「正しい歯」が必要です。「正しい歯」が、美味しいものをしっかり噛んで、「これは美味しい」「これは栄養になる」と、「扁桃体」を通して、記憶装置の「海馬」に伝えるのです。

「正しい歯」で「正しく噛む」、これが大切です。一日三回の食事の、一回一回で「正しい歯」と「そうでない歯」の差がでてきます。「正しい歯」は、美味しいものを「心地よい記憶」として、脳に残します。そして、「正しい歯」は、脳を通して、全身に気持ちのいい指令を出し、しっかりと「才能」を引き出します。

「歯に心がある」というのは、少し文学的表現が過ぎるかも知れませんね。しかし、「勝つために、すべての力を発揮せよ」と、生涯負け知らずの剣豪宮本武蔵がいうように、「幸せな一生を送るために、自分のもてる力のすべてを使う」ということが重要であり、そのためには、「正しい歯」を、もっともっと「正しく使う」ことが大切だと改めて痛感した、宮川院長へのインタビューでした。